室内❝ひろしまストリート陸上プラス❞スペシャル 開催

 新緑の平和大通りでの名物イベント、「ストリート陸上」が新型コロナウイルスの影響を受けて室内開催となって2年目。20211120日、広島グリーンアリーナ(県立総合体育館)のフロアに、元気でスポーツ体験を楽しむ子どもたちの歓声が響き、夏の東京五輪メダリストらとの「競演」を繰り広げました。

 5月のフラワーフェスティバルの呼び物となったストリート陸上が、舞台を同アリーナに移して2回目となりました。広島県スポーツ協会、広島陸上競技協会、広島市スポーツ協会三者が「コロナ禍で、子どもたちの運動不足を補い、スポーツと触れ合う楽しさを体験しよう」と参加を呼び掛けました。当初、8月中旬の実施を予定していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大が依然として収まらず、やむなく延期となりました。

 11年前、広島でのストリート陸上を発案し、毎回駆けつけている男子400m障害の元プロアスリート、為末大さん(広島市佐伯区出身)が今回も足を運んでくれました。参加者は幼児から小学6年生までの約800人(保護者を含む)。「古里でストリート陸上を始めて10年以上。ずっと続いてくれてうれしいです。コロナ禍でも、今日は思い切り体を動かしていろんなスポーツを体験してください。才能はどこにあるかわからないのですよ」。為末さんは広島の子どもたちをそう励まして、イベントの開始を告げました。

 2度目の室内「スト陸」は新趣向が盛りだくさん。来場者が密にならぬよう、ピンクと青2色のリストバンドで色分けして、交互にフロアに降りてスポーツ体験に臨みました。アリーナ入場の際には体温チェックや消毒、マスク確認などコロナ対策も怠りませんでした。

 今回のスポーツ体験は①50m走②ハンドボール③ユニバーサルホッケーの3競技。ゲストは為末さんのほか、広島に本拠を置くホッケー女子、コカ・コーラレッドスパークスから東京五輪代表の錦織えみ、三橋亜記選手ら8人、同じくハンドボール女子イズミの五輪代表板野陽、堀川真奈両選手、元湧永製薬のプレーヤーだった志水孝行・呉工業高校教諭ら多彩な顔触れでした。さらに、東京五輪のアーチェリー男子団体で銅メダルに輝いた河田悠希選手(廿日市市出身、エディオン)はメダルを胸に、参加してくれました。

 開会式で県スポーツ協会の神出亨会長は「一流選手のすごさを感じて、体を動かす楽しさ、面白さを体験してください」と子どもたちを励まし、ゲストのアスリートたちが紹介されました。

 最初はフロアいっぱいの親子による「アクティブチャイルドプログラム」で始まりました。遊び感覚、楽しみながらのゲーム感覚で体を動かし笑顔が広がっていました。

 午後2時からいよいよスポーツ体験が始まりました。アリーナはハンドボール、ホッケー、50m走の3つのゾーンに分けられました。子どもたちは思い思いに各ゾーンで競技にチャレンジしていきました。

 ハンドボールは、ゴール目がけてのシュート体験です。指導役の志水さんは元日本代表GKでした。もう1人の指導役、元イズミの髙山智恵さんは「いいよ」「うまい」と声を掛けていました。シュートが見る間に上達した広島市佐伯区、河内小6年の山田匠悟さんは「体育が好きなので参加した、見よう見真似だったが思ったよりハンドボールが上達した」と息を弾ませていました。

 ホッケーは室内用のプラスチックボールとスティックを使用し、ドリブルからシュートに持ち込むプレーの体験です。レッドスパークス選手の指導も次第に熱を帯びていきました。1週間前に日本リーグプレーオフ決勝で黒星を喫したにもかかわらず、笑顔で接する姿が印象的でした。

 50m走は今回、上級生は全天候型のウレタンコートの走路を使用し、QRコードで記録も自動的に計測されるなどハイテク化していました。参加した小学生以上のほぼ全員が走り終えていました。一方、アーチェリーの河田選手は一人ひとり丁寧に用具を説明し、競技の質問に答えていました。子どもたちは450gの銅メダルをさわって感触を楽しみました。真っ先に触った広島市安佐南区、長束小4年、井手楓さんは「メダルはずっしりと重かった」と驚いた様子でした。

 体験イベントが一段落した後、五輪選手によるデモンストレーションが始まりました。ホッケー日本代表、浅井悠由選手はスティックから豪快にシュートを放ち、子供たちのため息を誘いました。女子ハンドボールは堀川選手のシュートをGK野選手がセービングし、大きな拍手に包まれました。

 ハイライトは銅メダリスト河田選手による70m試射でした。場内が固唾をのんで見守る中、最初の矢は70m先にあるCD1枚分という真ん中の「10点」を見事に打ち抜いたのです。続く2本のチャレンジは「8点」でしたが、「広島のロビン・フッド」河田選手の妙技に目を奪われていました。

 続いて、50m走で最もタイムの良かった56年男女4選手は最後に、2004年アテネ五輪陸上短距離代表の松田亮さん(広島経済大准教授)と競走しました。参加者中最も速い744をマークした広島市西区、高須小6年、仲村海莉さんは「力強い腕振りを意識して走った。でも(松田さんに)どんどん離されてしまった」と悔しそうでした。

 最後のイベントは為末さんとホッケー代表、錦織選手が50m走のマッチレースを演じました。現役の五輪ホッケー代表と過去3回五輪陸上出場の為末さんの対決は大盛り上がりです。チームメートが大声援を送る中、好スタートを切った錦織選手でしたが、そこは元世界選手権銅メダリストの実力で、為末さんの圧勝となりました。

 この後、「サプライズ」が待っていました。陸上男子100995の日本記録を持ち、東京五輪で日本選手団の主将を務めた広島育ち(修道中、高出身)のスプリンター、山縣亮太選手が姿を見せたのです。所用で里帰りし、激励にやって来てくれたのです。広島陸協から日本記録樹立の記念品を贈られた山縣選手は「日本選手団主将になれてうれしかった。次のパリ・オリンピックにもいい形で出たい」と力強く話し、会場を後にしました。

 4時間のスポーツイベント「スト陸」に子どもたちはすっかり満足した様子でした。開催を提唱した為末さんは「いろんなスポーツを体験して、好きなことにチャレンジし続けてください。来年はフラワーフェスティバルの会場でやれればいいですね」と、締めくくってくれました。

                        広報委員会       

                          委員長  渡辺 勇一