歓声に包まれ〝ひろしまストリート陸上プラス〟開催

 平和大通りで4年ぶり、妙技に拍手

 新型コロナウイルス感染拡大のため過去3年、室内で開催してきた本協会など主催の「ひろしまストリート陸上プラス」が611日、4年ぶりに青空の下で繰り広げられました。

広島G7サミット開催の影響で、1か月延期されたひろしまフラワーフェスティバルの恒例イベントとして「スト陸」も復活。広島市出身の為末大さんや木村文子さんら陸上トップ選手のトークや小学生ランナーとの対決のほか、ゲストとして加わった体操界のレジェンド、内村航平さんが華麗な跳馬の演技を披露し、どよめきと歓声、そして大きな拍手が会場を包みました。

ストリート陸上は同市佐伯区出身で、男子400m障害日本記録を持ち世界選手権で2度銅メダルの為末さんが呼びかけて2011年にスタート。トップアスリートの妙技はフラワーフェスティバルの呼び物となりました。しかし、コロナ禍でフェスティバルは中止され、これまで3回は県立総合体育館アリーナで代替開催してきました。

久しぶりに青空の下で復活したスト陸に、五輪選手が集いました。為末さんは2000年シドニー、2004年アテネ、2008年北京の3大会に出場。同市安佐北区出身の木村さんは2012年ロンドン、20年東京大会の女子100m障害、「木村さんの友人」という女子短距離の髙橋萌木子(ももこ)さんはロンドン五輪リレー要員でした。

会場の視線を釘付にしたのは体操の内村さんでした。北京から東京大会まで4度の五輪に連続出場し、ロンドンと2016年リオデジャネイロで個人総合連覇を果たし、五輪で獲得したメダルは計7個(金3、銀4)。世界選手権では個人総合6連覇を飾るなどスーパーアスリートにふさわしい成績を残し、22年に現役を引退しています。

 大勢のギャラリーが見守る中、恒例の男子棒高跳びの3選手によるデモンストレーションから開始しました。セットされたゴム製バーの高さは5m。このイベントにすべて参加してきた37歳の萩原翔選手(尾道商高教)は惜しくも失敗。下瀬翔貴選手(広島特別支援学校教)もクリアできませんでした。しかし、2人目の蔵田雅典選手(観音高教)は鮮やかに跳び越え、喝さいを浴びました。自己ベストとなる5m30こそ失敗に終わりましたが、迫力あるジャンプを披露してくれました。

 呼び物の内村さんの体操演技は、トラックに特設した跳馬で繰り広げてくれました。手前のロイター板で大きくジャンプし、高さ135cmの跳馬を高々と跳び越えていきました。しかも、ワイヤレスマイクを握ったまま、跳馬に手をつくことなく空中で難なく回転して見せました。圧巻は、締めくくりに挑戦した「2回宙返り半分ひねり」の妙技でした。空中に大きなアーチをかけた内村さんの迫力あるジャンプと難度の高い技に触れ、子供たちは目を輝かせていました。

 

 マイクに向かった内村さんは自らの幼少期を振り返り「最初の大会は最下位でした。でも失敗を繰り返して今があるのです」と語り、「誰でも可能性はあります。新しい技への挑戦や日々の指導は怖かったけれど、環境は変わっても練習の積み重ねが必要です」と優しく呼びかけていました。

 

 もう一つの呼び物、小学生の50mダッシュには昨年度の県ランキング上位を占めた男女各6選手が挑みました。出場したのは以下の顔ぶれでした。

男子1組・梶山知寛(五日市東小)小野蒼汰(駅家小)佐藤士元(三良坂小)▽同2組・西村岳(緑井小)古川悠哉(五日市観音西小)堀口蓮太(田野浦小)

 女子1組・難波琉亜那(阿戸小)山路舞香(蔵王小)石井咲(地御前小)▽同2組・香川珠妃(五日市観音西小)吉田夏帆(宮園小)三宅にこ(可部小)

 

 各組1位となった男女各2人は、女性トップスプリンターとの対決に臨みました。女子の難波、香川両選手はトップハードラーだった木村さんとのレースでした。小学生が好スタートを切って、「(21年に)引退後、50mを走るのは初めて」という木村さんを慌てさせました。難波選手はそのままトップを維持してゴールイン。

 男子のレースも白熱しました。小学生が挑んだ五輪ランナー髙橋さんは女子200mで日本歴代2位、100mは同3位の記録を持つスプリンター。髙橋さんを挟んで1レーン梶山、3レーン西村両選手が一斉にダッシュ。ややスピードを緩めた髙橋さんを梶山選手が追走し見事にトップを奪いました。

 723で男子レースを制した梶山選手は「一流のアスリートと走るのは初めての体験で緊張した」と話し、西村選手は「一生に一度の体験ができた」と喜んでいました。男子をしのぐ712の好記録をマークした女子の勝者、難波選手は「いつ(木村さんに)追い抜かれるか怖かった」と言い、香川選手は「とてもうれしかった」と感想を口にしていました。

 レース後木村さんは「肉離れを心配しながら走りました」と笑顔を見せ、髙橋さんは「小学生の圧がすごかった。(一緒に走った)2人とも速かった」と健闘をたたえていました。一方で、レース前には木村さんがスキップ指導をするなど、小学生スプリンターに「速く走る」コツを伝授していました。

 約1時間半にわたって繰り広げたストリート陸上プラスのラストに、ステージから為末さんら出演アスリートが、感想や期待を込めて次のようにメッセージを残してくれました。